下町ボブスレーをジャマイカが不採用にした本当の理由とは?

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平昌オリンピックのボブスレー競技でジャマイカの女子チームが、下町ボブスレーからラトビアのBTC社製ソリに乗り換えたことがかなり注目を集めていました。ジャマイカが不採用にした理由は、性能とレギュレーション違反である、と回答しているようですが、本当にそうなのでしょうか?

2018年2月27日に放送されたテレビ番組「下町ボブスレーの真実」を見て、個人的に不採用の理由を考えてみました。これまでに語られたことのあまり無い視点だと思うので、少しだも楽しんでいただければ幸いです!

下町ボブスレーの真実で明らかになった事実

テレビ番組「下町ボブスレーの真実」で明らかになった事実をまずは箇条書きにしてみます。事実だけですよ!憶測とかは抜きです!

  • ボブスレーの部品は町工場の努力により無償で供給されていた(カーボンボディ等はスポンサーがお金を出してくれた)
  • 部品の中には加工に3週間もかかるものがある
  • ジャマイカの選手や他国のエンジニアが指摘した「ハンドルの操作性の問題(過敏すぎる)」は修正されなかった
  • 日本から派遣されているエンジニアはいなかった
  • ワールドカップという大事な大会にも関わらず、下町ボブスレーが試合開始に間に合わなかったことがある
  • 直前になってもレギュレーション違反を犯していた
並べてみると面白いですねー。直前でもレギュレーションをクリアしていなかったとかそもそも大問題ですよね!会見では「修正したから問題ない」とか言ってましたが、選手の立場で考えるとそんな危ない橋を渡りたくありませんよ(笑)

その他、推測で次のようなことが言えると思います

  • 下町ボブスレーの製造コストは恐らくとても高い(公式には1,800万円との記述もあるが恐らくそれ以上)
  • ボディのカーボン部品は1,000万円はくだらないかも
  • 基本設計の担当はボブスレーという競技をあまり経験していないかも
  • ジャマイカ選手や他国コーチのフィードバックをもとに設計変更するくらい、完成度は低い
  • ハンドルの操作性は恐らく基本設計に大きく依存しているので、直したくても直せない(修正は大幅な基本設計変更を余儀なくされる)
こんなところでしょうか。性能とかレギュレーション以前に大きな問題があるとすれば、基本設計がしっかり煮詰まっていないということです。テレビ見ました?組立とかメンテナンスのこと全く考えてなさそうですよね(笑)

下町ボブスレーのプロジェクト構想に問題あり?

次に、下町ボブスレーというプロジェクトについて見てみます。もともとは日本代表に国産ソリを供給してオリンピックに出てもらおう、というプロジェクトだったような気がしますが、日本代表から不採用になってジャマイカに売り込んだのでしょう。ソチオリンピックから足掛け6年もプロジェクトを続けて来たようです。

そもそもプロジェクトとはなんでしょうか?調べてみるとプロジェクトとは、

PMIが制定しているPMBOK(第5版)の定義では、「プロジェクトとは、独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する有期性のある業務」とされている。

つまり、会社などの通常業務や、継続的な運用管理、あるいは改善活動などは、特に開始と終了が定義されていないので、「プロジェクト」とは呼ばない。

そうです。プロジェクトは本来「期日が決まっている活動」です。

一応、下町ボブスレープロジェクトの目的を見てみましょう。

モノづくりの原点である「困っている人を助ける」・「ネットワークによって難題を解決する」・「新たな価値を提供する」・「夢のあるモノづくりをする」という主旨に賛同し、ボブスレーのソリを製作、また、選手のサポート・育成を行い、オリンピックでメダルを獲得するという目標を実現・推進すること目指しています。

このプロジェクトを通じ日本が弱いとされてきた「もの・ことづくり」の基礎を築き、大田区・日本のモノづくりの将来の可能性を世界に示し、さらに次世代を担う若者へ「ものづくりは面白い」と五感に訴えます。

ランナー(金属)の低摩擦化技術は、風力発電などの次世代エネルギー開発には必須の要素技術であり、またボブスレーの土台は金属と炭素系素材で構成され、この技術は航空機などに採用されており、環境・航空機分野へ進出の第一歩となります。

「ボブスレー」製造に参入することにより、大田区・日本のネットワークの世界的な技術信用度および開発プロデュース力をPRし、欧米市場のスポーツ案件や環境エネルギー開発、航空機産業などへ提案、受注獲得を目指します。

率直な感想を申し上げると、ボブスレーはPRの道具ですね(笑)

つまり、ボブスレーによるPRが成功すれば、ボブスレーはおしまいということでしょうか。オリンピックでメダルを、という言葉もありますが、美辞麗句を並べているだけですね。「下町ボブスレーの真実」を見る限り、本当にメダルを取ることが目的だったようには見えません。メダル獲得が目的なら他にやること山ほどあるでしょ!

プロジェクトマネジメントの視点で言うと、今回の失敗は「期日があいまい」なことや、「目的が不明確」なことが大きな理由だと考えられます。PRという意味で、日本国内に向けては話題を提供していますが、欧米市場に向けたアピールは全く出来ていないと思われます。「もの・ことづくり」という素晴らしい言葉もありますが、コトについて全く考えられてません!

期日が設定されていない、ということは大きな問題です。このプロジェクトは政府肝いりのようですが、納期が無いので無限にお金を引っ張ってくることが可能な装置に成り下がっています。自分達の手弁当でやっているビジネスではないので、プロジェクト推進者たちから危機感はあまり感じられませんでした。

良いものを作れば使ってくれるという信仰

「下町ボブスレーの真実」で再三再四出てきた言葉があります。それは、「良いソリを作れば使ってくれる」という言葉です。

良いソリってなんですか?良いソリってなんですか?良いソリってなんですか?

メーカーがやるべきことは、使ってもらえるソリを作ることです。自分達の自己満足を押し付けて何になるのでしょうか。日本の製造業が世界で戦えない、利益を生み出せていない構造・考え方がこの言葉に表れていると思います。テレビ情報だと、大田区の製造業は年々減少しているんですって・・・過去の成功体験にしがみついて同じ思考でプロジェクトを進めていることに驚きを隠せませんでした。

ジャマイカのコーチ、サンドラの存在について

「下町ボブスレーの真実」では、ジャマイカのコーチだったサンドラがBTC社とつながりがあったことなどを紹介して、あたかも黒幕のように仕立てていましたが、私はそう思いませんでした。

コーチとしてのサンドラの発言は至極真っ当で、ぐうの音も出ないくらい正論だと思います。「そりに乗ってみろ」「もっとエンジニアに話を聞け」

コーチの立場で考えると、下町ボブスレーに明確な優位性が見当たらないのであれば、BTC社のソリの方が良いでしょう!実績もさることながら、エンジニアたちの持っているデータ量や、サポート体制、供給部品の量などを考えると妥当な判断だと言えます。むしろ下町ボブスレー使うメリットってあるんでしょうか?

下町ボブスレーが不採用になった本当の理由

契約書が悪いとか、政治で負けたとか、そういう理由も一つあると思いますが、私は次の3つが不採用になった本当の理由だと思います。

  • オリンピック後も継続的にソリのアップデートや部品供給を受けられない可能性がある
  • メーカーがボブスレー競技やソリのことをわかっていない&エンジニアがいない
  • ともに戦うパートナーになれるとは思えない
下町ボブスレーは「プロジェクト」です。プロジェクトなので期限が決まっています。(決まっているはずです)方や、ボブスレー競技は毎年継続的に行われます。オリンピックはもちろん重要ですが、4年に1回の大きなイベントというだけです。

下町ボブスレープロジェクトに、ボブスレーそのものをビジネスとして、継続的にソリを供給し続けるという意思はあったのでしょうか?ソチ五輪、平昌五輪と日本代表から非採用通知を受け取った理由は、性能もさることながら、継続的なサポートを受けられるという確信がなかったからではないでしょうか?

日本代表の視点に立つと、オリンピックの時だけしゃしゃり出て来る面倒な連中、くらいにしか思われていなかもしれません。ジャマイカの視点に立つと、平昌オリンピックまでは無料でソリを供給してもらえるというメリットに飛びついてみたものの、長期的視点で考えると下町ボブスレーとの関係は継続すべきではないという判断に至ったのではないかと思います。

どうすれば下町ボブスレーはオリンピックを走れるか?

最後に、どうすれば下町ボブスレーはオリンピックを走れるか?ということについて考えてみます。最初に必要なことは「プロジェクトの目的並びに体制」の見直しです。オリンピックを目指すチームは継続的なサポート体制を必要としています。そして、その意味するところはプロジェクト自体を見直すことに繋がります。

もし、本当にオリンピックに出たい、という目的を掲げるのであれば、1つの方法として世界一のソリメーカーを作ることはいかがでしょうか。世界一のソリメーカーになれば、いろんな国からビジネスとして供給を依頼されるでしょう。

さらに、プロジェクト体制の変更も必要でしょう。今の体制では十分なサポートを供給し続けることは不可能です。そもそも、技術も無い、エンジニアもいない、お金もない、という無い無いずくしの現状をまずは冷静に認識すべきです。その上で、目的達成に本当に必要なリソースを調達するのが本筋ではないでしょうか。町工場の努力によって部品は無償で供給されているようですが、未来永劫そんなことはつづけられませんよ!ヒト・モノ・カネをちゃんと集めましょう!

その上で、ボブスレーの世界で信頼を勝ち取り、パートナーとして認められることが必要です。ちゃんとしたリソースをもって、体制も整っていれば少々性能が劣っていたところで日本代表から門前払いを受けることはないと思います。日本代表はBTC社のソリを使っているようですが、もし下町ボブスレーが本気で活動してくれるのなら、自分達だけのオリジナルマシンを手にすることが出来ます。モータースポーツの世界の言葉を借りれれば、「純国産ワークス体制」を構築できる、ということになるでしょう!

Wrap up! by パッショノン

  • 「下町ボブスレーの真実」というテレビ番組が放送されたが、ジャマイカが不採用とした理由は性能・レギュレーション以外の部分だと感じた。
  • 個人的な意見として、不採用の理由は「継続的なサポート体制が無い」「ボブスレー競技に関する技術・リソースが不足している」「現状の体制では真のパートナーにはなりえない」という3点だと思います。
  • 下町ボブスレーがオリンピックで走るためには、「プロジェクトの目的と体制」の見直しが必須だと思います。
  • 本気でオリンピックを目指すなら、是非「純国産ワークス体制」を構築して欲しい!
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